土光敏夫(1896-1988)氏と言えば、あらためて説明するまでもなく、岡山が生んだ偉大な財界人です。石川島播磨重工業社長、東芝社長・会長などを歴任した後、1974年に経団連の第4代会長に就任し、2期6年勤めました。土光さんの名前を全国にとどろかしたのは1981年に会長に就任した第二次臨時行政調査会での活躍でしょう。この時は夕食にメザシを食べている映像がお茶の間に流れ、「メザシの土光さん」として、その質素な生活ぶりが人々の心を打ちました。

 

このように、昭和に活躍した偉大な財界人である土光さんですが、その名前をつけたダイズがブラジルにあることをご存じの方は少ないと思います。しかも、それが日本の食料自給という問題と関係し、発端がエルニーニョであることを知っている人は出身地の岡山県にもあまりいないでしょう。

 

きっかけとなった出来事は1972年にまで遡ります。1972年3月から1973年3月にかけての1年間、南米ペルー沿岸の海面水温が高温のまま持続する、当時としては20世紀最大のエルニーニョが発生しました。この影響でカタクチイワシの一種であるアンチョビの漁獲量が激減したのです。当時、アンチョビの魚粉は主としてヨーロッパに家畜のエサとして輸出されていました。アンチョビの不漁により、南米からのエサの輸入が途絶え、困ったヨーロッパの畜産農家は代わりにダイズを絞った粕であるダイズミールをアメリカから輸入しました。そのため、アメリカからヨーロッパへのダイズ輸出量が急増し、アメリカ国内でダイズの価格が急騰して前年の4倍にもなりました。この対策として当時のニクソン大統領は6月27日にダイズの輸出禁止措置を発表したのです。

 

ダイズが家畜のエサになるのかと疑問に思う人がいるかもしれません。ダイズというと、日本人は味噌、醤油、納豆、豆腐などの食品の原料としてのイメージしか持ちませんが、世界的に見て、日本を含む東南アジア以外では食用としてダイズはほとんど使われておらず、ほぼ全量が油を搾るための油糧用として消費されています。また、油を絞った残り粕であるダイズミールはタンパク質を含み、重要な家畜用飼料になります。

 

1972年当時の日本のダイズ自給率は3%で、しかもその輸入量の92%を米国に依存していたため、アメリカの輸出禁止により、豆腐の価格が上昇し、消費者がスーパーに押し寄せるなどの騒ぎになりました。しかし、アメリカでは1973年産のダイズが豊作になることが確実になり、アメリカ政府は9月8日にダイズ輸出禁止措置を解除しました。結果的に、この輸出規制は約70日という短期間で終了したのです、日本が食料安全保障上、ダイズの輸入先を多様化しなければならないと考えるきっかけになりました。そこで注目されたのがブラジルのセラードです。

 

セラード(図1の茶で示されている部分)はブラジルにある植生の一つで総面積は約2億ヘクタールもあります。ねじ曲がった木が生えており、独特の景観をなしています。酸性土壌であるため、かつては不毛の地と見なされ、農業生産にはまったく利用されていませんでしたが、土壌改良さえすれば極めて農業に適していることが明らかになり、ブラジル政府の農業研究開発機関による亜熱帯用品種の開発と相まって1970年代以降急速に農地開発が進み、現在ではブラジルのダイズの約6割がセラードで生産されています。

 

図1 セラードの分布

出典:世界自然保護基金(WWF)ブラジル

 

1974年9月、当時の田中角栄首相がブラジルを訪問してガイゼル大統領と両国でのセラード農業開発について合意し、1979年から日本・ブラジル共同のナショナルプロジェクト「日伯セラード農業開発協力事業(プロセール事業)」が開始されました。この事業は2001年に終了するまで20年以上にわたり、700戸以上の農家が入植し、34.5万ヘクタールの農地が開発されました。現在のブラジルの農地面積に比べると一見わずかな面積に思えますが、この事業の成功により、セラードでダイズ生産が可能であることがわかるとブラジル全土からセラードに入植してダイズを生産する農家が集まり、現在ではブラジルがアメリカと並ぶダイズ生産国になっているのです。実は私も3年間だけですがこの事業にかかわりました。

 

写真1 センターピボット(筆者撮影)

ブラジルのダイズ畑ではコンパスのように中央の軸を中心に、水が出るホースを吊り下げた腕のようなものが回転して灌漑する、センターピボットという大規模灌漑装置が導入されています。

 

写真2 ダイズ畑の航空写真(筆者撮影)

センターピボットにより灌漑された畑は緑の円をなしています。この一つの円は50ha以上あり、岡山県の農家1戸当り農地面積の50倍ほどです。

 

ブラジル政府は、この日本の援助に対して大変感謝し、1980年にブラジルで最初に実用化された熱帯用のダイズの品種には、田中首相に依頼されて、経済界からこの事業への出資に尽力した経団連の土光敏夫会長の名を取り、「Doko」という名前が付けられたのです。結果的に、アメリカの輸出禁止措置がアメリカに並ぶダイズ生産地をブラジルに産み出したというのは皮肉な出来事とも言えます。現在、アメリカと中国で貿易摩擦が激しくなっていますが、輸出制限をした国は中長期的に損をするというのが歴史から学ぶ教訓です。

 

プロデセール事業を推進するにあたり、日本、ブラジル双方に献身的な働きをした方がいました。しかし、このような歴史的な事業が日本ではほとんど忘れ去られようとしています。かつて日本が世界の食料の需給関係を変えるような大規模な国際協力の事業を実施したということを皆さんに知って欲しいと願っています。

 

ノートルダムホール本館の東側の銀杏並木が色づき始めました。この並木道が黄色の絨毯でおおわれるようになる頃には、いよいよ卒業論文は大詰めを迎えるようになります。

今年度の人間生活学科の卒業論文審査発表会は121日(土)に行われます。当ゼミでも4年生9名が卒業論文完成に向けて頑張っています。

銀杏並木(2018年11月13日撮影) 

では、簡単に卒業論文のテーマを分野別にご紹介しましょう。

<地域活性化に関するテーマ>

 〇畳縁の地域ブランド化(倉敷市児島地域)

   児島地域はジーンズだけでなく、畳縁が全国生産量の8割を占める繊維産業の盛んな地域ですが、

   このことはあまり知られていません。そこで畳縁を用いた地域活性化案を検討しています。

<服飾に関する研究テーマ>

 〇お色直しのドレスについて

   披露宴会場の大きさや人数の違いによって花嫁が選ぶドレスの形や色などに違いがあるか等をアン

   ケート調査に基づき、研究しています。

 〇「なんちゃって制服」について

   近年流行している制服風一般衣料「なんちゃって制服」の受容について、ティーンズ雑誌を用いて

   研究を行っています。

 〇靴のサイズ表記について

   靴のサイズ表記の実態調査(店舗・カタログ販売誌・インターネット)を行い、表記が消費者に分

   かりやすいものか、問題点がないか等の検討を行っています。

 〇浴衣について

   雑誌等における浴衣の掲載状況を調査し、浴衣の着用場面と着こなしの変遷について研究していま

   す。

<社会のあり方に関するテーマ>

 〇結婚式と葬儀について

   岡山市における結婚式と葬儀について雑誌やインターネットで現状を調査し、その傾向を検討して

   います。

<美容に関する研究テーマ>

 〇化粧品の広告について

   雑誌に掲載されている化粧品広告の内容分析や女子大生の化粧品情報の入手方法をもとに化粧品広

   告の変遷について研究を行っています。

 〇昭和10年代前半の美容について

   当時の雑誌記事や読者からの問答欄を中心とした文献調査を行い、当時の洋装化と美容について研

   究を行っています。

<ジェンターに関するテーマ>

 〇家庭科教科書にみるジェンダーについて

   小中学校の家庭科教科書における挿絵・写真のジェンダーバイアスへの表現の配慮はどのように

   なっているのか調査し、その現状について研究しています。

 

卒業論文の完成を目指して頑張っています。12月1日の審査発表会が楽しみです。  

夏休み真っただ中、今年度のオガワゼミの4年生の卒業論文作成は現在進行形です。この猛暑な中、ゼミ生は、自分が決めた卒論のテーマに沿って自分のやるべきことを自問自答しながら、完成に向けて一歩一歩着実につくり上げています。ゼミ生の卒論の内容を簡単に紹介します。

Hさんは、毎日食べる食品の安心・安全に興味を持っています。そんな中で、遺伝子組み換え食品について注目しました。少し前まで、盛んにマスメディアで取り上げられていたこの問題は最近、ほとんど取り上げられなくなりました。しかし、遺伝子組み換え食品は以前に比べて、より多く、かつ着実に私たちの食生活に入り込んでいます。そこで、遺伝子組み換え食品や作物の現状を知り、消費者として遺伝子組み換え食品にどのように向き合ったらよいか、改めて考察しようと取り組んでいます。

ダイズを原材料にしている醤油の食品表示ラベル

Kさんは、ジオパークによる地域活性化に取り組んでいます。ジオパークには、日本ジオパークや世界ジオパークといったレベルがあります。最近では、伊豆半島などが世界ジオパークに認定されました。今後もジオパークに認定される地域があるでしょう。認定されることで、地域の活性化の牽引になるでしょうが、一方でさまざまな課題・問題点が上がってくるでしょう。日本各地のジオパークに認定された地域を詳細に調べて、良かった点だけでなく、認定されたことで地域住民が抱える課題や問題点を明らかにしようとしています。

ジオパークのひとつ"箱根ジオパーク"に設置されている解説

 

  

Mさんは、海ごみに興味を持ちました。瀬戸内海に面した岡山県の海岸にも多数のごみが漂着しています。そのごみの多くは、私たちが普段の生活の中で捨てたプラスチックなどが川を経て海へ流れ出たものです。最近、世界でプラスチックによる海洋汚染が問題になり注目されています。海洋のプラスチックごみは、紫外線などで分解されて細かい断片になり、食物連鎖を介して、動物プランクトンから大型の魚へ取り込まれ、やがて人間に摂取される可能性が指摘されています。世界では大手外食企業による使い捨てプラスチックストローの廃止などが表明されています。さらに、今年(2018年)のG7サミットでは、プラスチック削減目標を掲げた"海洋プラスチック憲章"が採択されました。身近な瀬戸内海の海ごみやプラスチックごみなどによる海洋汚染を防ぐために私たちができることは何か。考察しようとしています。

岡山市内の用水路に捨てられていたペットボトルとプラスチック製のかご

Eさんは、幼い時から動物が好きで、家庭でもペットのイヌを飼っています。そのため、アニマルセラピーに関心を持ち、ペットと人の癒しの関係をテーマに取り組んでいます。文献や資料を集め、分析し、独自の見解を導き出そうとしています。

人の心を癒してくれる代表的なペットのイヌ

 

Fさんは、森林の役割、特に森林が担っている保健・レクリエーション機能について調べています。岡山県は県北を中心に森林が多くを占めていて、ヒノキの生産は昨年全国第2位でした。"森林の国おかやま"と言っても過言ではありません。その森林がストレス軽減や免疫力向上、心理的リラックス作用など健康へ貢献する機能について詳しく調べたうえで、岡山県の森林行政、施策について考察しようとしています。

人の免疫機能を高める森林浴の効能の説明板

Nさんは、日本人に愛される玩具について調べています。昔から身近に愛されている玩具はいろいろありますが、特に最近注目されているものに"けん玉"があります。外国人にもファンが多くいます。"なぜ"なのでしょうか。"けん玉"の魅力を探るだけでなく、いろいろな伝統的な玩具や現代の玩具にも考察を広げて、研究中です。

日本の伝統的な玩具のけん玉(左)とヨーヨー(右)

 

 

Yさんはエネルギー問題に関心を持っています。現代生活において、エネルギーの中でも特に電気はなくてはならないもので、生活の基盤を支えています。この電気をつくる方法には火力発電や水力発電、原子力発電のほかに、さまざまな再生可能エネルギーによる発電が提案されています。岡山県は南部を中心に年間の晴れの日数が全国的にも上位であることから、大規模な太陽光発電の立地条件の良さで注目されています。一方、県北は豊かな森林があり、木質バイオマス発電には良い環境です。また、山間部が多いことから小水力発電にとって良い地形と思われます。そのため、Yさんは岡山県を中心に、再生可能エネルギーの可能性を探っています。

木質バイオマス発電所

 

Sさんは、阪神淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などで明らかになった地震保険の加入率の低さに興味を持ちました。大きな地震が起きるとその地域を中心に地震保険の加入率は少し上がりますが、全国的にはさほど上がっていません。加入率の低さはなぜなのか。地震保険の加入条件の分りにくさなども原因の一つでしょう。加入率の現状や地域的なバラつき、保険の内容などを精査し、海外の事例などとも比較して、現状の地震保険の課題を考察しようとしています。

2018年6月の大阪北部地震で被災した、ブルーシートで覆われた民家の屋根

Wさんは、東京ディズニーリゾートの魅力について調べています。開園以来、人々を惹きつけ、入場者数を増加し続けている理由はなにか。みんなを楽しませるために、どのような工夫や努力をしているのか。調べると徹底した来園者ファーストの姿勢が見えてきます。Wさんは自身でも東京ディズニーリゾートのさらなる魅力を見つけようと現在、調査中です。

夏休みが終わり、2学期のゼミでの進捗状況の報告が楽しみです。・・・小川ゼミでした。

前回紹介した「おかやま秋の収穫祭 地産地消マルシェ2018」の続報です。9月14日(金)午後、岡山商工会議所にて「生産者さんと飲食店さんのマッチング商談会」が開催されました。生産者の皆さんが自らの生産品のPRを行い、飲食店の方々に活用を考えてもらうための催しです。

マッチング商談会風景

当日はノートルダム清心女子大学から3名の学生が参加しました。生産者の皆さんの紹介をした後、各ブースをまわってお話をうかがい取材をするのが仕事(?)です。

その様子は前回紹介したインスタグラム(←をクリックしてください)やフェイスブック(←をクリックしてください)で報告していますので、是非ご覧ください。

マッチング商談会 清心farmers

取材風景

今後は試食会への参加や、実際に生産の現場にうかがって取材をすることなどを予定しています。今月の21日から2学期が始まり、いっきに忙しくなりましたが、可能な範囲で「地産地消マルシェ2018」をサポートしてくれています。

また、地産地消マルシェ2018の企画・PRに協力しているグループの名称が「清心farmers」に決まりました。早いもので開催日の11月3日まであと1ヶ月と少し。楽しいイベントになりますように!

生産者さんと

今回は学科の枠を超えた活動について、ご報告します。岡山市さんが主催し、今年で3回目になる「地産地消マルシェ2018」についてご存知でしょうか。岡山市さんからのお誘いがあり、今年はノートルダム清心女子大学の学生たちがこの催しに一緒に取り組むこととなりました。
地産地消マルシェ2018
「地産地消マルシェ2018」とは、岡山市のWEBサイトによれば「市民みんなで秋の収穫を祝い、岡山市の農業の魅力を発信。年に一度の農業まつり、『おかやま秋の収穫祭 地産地消マルシェ2018』を開催します。当日は産直農産物の販売ブースやグルメブースなどが多数出展します。岡山の秋の味覚が満喫できるイベントです。ぜひご来場ください」とのこと。岡山市の農業振興策として、生産業者さんと飲食店さんをマッチングして新しいメニューやレシピを開発したり、地産地消どんぶり王選手権などのイベントを行ったりして岡山市の「地産地消」の取り組みを盛り上げていこうという趣旨のマルシェ(市場)です。(開催日は11月3日(土)、場所は岡山市・下石井公園

若い人の関心を高めたいとの目的で本学にお声かけをいただきました。本学としても、学生が地域活性化に関するイベントの企画や運営、PRなどに取り組むことで、座学では学べない様々な経験ができるよい機会ではないかと考えました。授業などで紹介をし、7月下旬に説明会を、8月はじめに2回、実践会議を開いた結果、十数名の学生(人間生活学科と現代社会学科の学生たち。1年生から3年生まで学年横断で。)が関心を示してくれました。本学の地域連携センターが窓口となり、地産地消マルシェ2018の若者向け(?)広報と、生産者と飲食店をマッチングしてランチプレートのアイデア作りに関わっていくことの2つを軸に活動していくことになりました。
マルシェ会議風景
8月31日(金)から本格的に活動を開始(今回は4名参加)。まずは学生からの提案でインスタグラムを開設することにして、その内容と、9月14日(金)に行われる「(生産者と飲食店の)マッチング商談会」をどう盛り上げていこうかという議論を中心に話を進めました。運営を担当する株式会社ビザビさんを訪問し和気藹々と議論を行い、いくつかの取り組みを行っていくことになりました。

学生は勉強(?)やバイトなどで忙しく、なかなか集まることができないため、SNSでのコミュニケーションも活用して取り組んでいくこととなりました。初めてのチャレンジなのでうまくいかないこともあると思いますが、そんな失敗もよい経験として自らの成長につなげていってくれることを願っています。
マルシェ会議風景2