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台北で死者を送る
   
坂口 真理
 私事になるが、夫の母親が亡くなり、葬儀に出かけた。夫はアメリカ国籍の中国人で、母親は夫の弟の家族とともに台湾に住んでいる。今回、初めて台湾(中華民国)の葬儀に参列した印象を語ろう。日本とは異なる独特の文化が見えてくるだろうから。
 葬儀は仏教式であったが、民間の信仰も混じっているように思われた。義母の遺影が祭ってある所に、花やお菓子や家族が食べるのと同じ食べ物を一式供える。3回礼をして。お線香をあげる。この礼を葬儀の日までの間、2日おきに行う。 写真01
 ご遺体は冷凍保存され、風水によって葬式によい日が選ばれる、この日沢山の葬儀が行われるので、葬儀屋は忙しい。葬儀の前日に尼さんに御経をあげてもらった。尼さんは朗々とした声で、独特な民謡風の節回しで、御経を読む。尼さんが読むだけでなく、我々親族7名にも読本を配り、声を出して一緒に読む。皆で一緒に唱えることによって、意味がわからないながら、一体感を感じた。御経は、幸い漢字で書いてあり、公用中国語 (Mandarin) なので、私にも大体わかる。昔UCLAで2年間中国語を学び、学年で1番の成績をおさめたが、それでも長い間使っていないので言えるのは、片言である。相手の言っていることはかなり理解できる。
 葬儀の当日は、遺影の前でひざまずき、3回礼を何度も繰り返した。その後、 ご遺体と対面し、その前でひざまずき、3回礼をした。
 また、家や車やお金に見立てた紙袋を燃やす場所があり、そこで燃やす。この天国で使う紙幣には、冥界銀行とか$5000とか書いてあり、中には毛沢東の顔を印刷したものもある。燃やすと天国まで届いて、死者が使うことができると信じられている。 写真02
 形だけの儀式ではなく、時間をかけて心を込めていろいろな行事を行う。今の日本で行われている一般のお葬式に比べると、この国のお葬式は、死者と生きている者との距離が近く、時間もゆったりと流れていると感じた。ここは、死者を身近に感じて生きている優しい心を持った人々の国だと思った。一時代前の日本も、このように、死者と生きている者との距離が近かったはずだ。
 
 
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